第2回 第3課目A (2008年4月11日 馬事公苑) ほか

大田芳栄&パーチェ

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第2回

第3課目A(2008年4月11日 馬事公苑)

パーチェの生年月日は2003年4月8日ですから満5歳と3日での競技会デビューですので、年齢や初めてという事を考慮すれば、素晴らしいデビューだと思います。
本人も当時を振り返って以下の様にコメントしています。

「伸ばすときなど回転数が上がってしまう速歩ですが、リズムは乱れることはなく頭頸も前半は安定して経路をまわることができました。
しかし、駈歩区間になると少し低くなるところもあり態勢として厳しい部分もありました。
今回が初めての外(クラブ以外の場所)での試合でしたが、運動項目は大きなミスもなく回ることができました。」

尚、シンプルチェンジは現在では図1の様に、駈歩から常歩への移行、常歩、駈歩への移行を一つの運動と捉え、中央線を過ぎてから発進するのが正しいとされていますが、2009年当時は図2の様に中央線で駈歩を発進するのが一般的でした。

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第4課目(2008年4月12日 馬事公苑)

競技会デビューの翌日の第4課目です。馬が競技慣れしていないのでフラつく場面はありますが、馬の体勢、速歩から常歩への下方移行、速歩の肩内、ハーフパス、駈歩のハーフパスなどにこの馬の将来を予感させる動きがみられます。
尚、この競技の得点は56.476%でした。

頭頸が全体的に低くなってしまいました。
周りを気にしてときどきリズムが崩れるところもありましたが、ハーフパスは安定してできました。
フライングチェンジは変換することが精一杯でジャンプも不足し、ポイントで変えることもまだできていません。
まだこの時期に4課目を踏むことは早かったのかもしれません。

 

第3課目A(2008年4月26日 御殿場競技場)

風が巻くスリ鉢状の地形で音も反響する新馬には厳しい環境で、馬事公苑とは打って変わって落ち着きのない演技になってしまいましたが、その中でも過度に馬を抑え過ぎて、潜られたりビハインドになったりする事のない非常に丁寧な乗り方だと思います。
御殿場での得点は初日が58.484%、次の日は59.696%でした。(動画は二日目のもの)

周りの物音やちょっとしたことに集中力が欠ける部分もありました。
リズムブレイクや移行のスムーズさがなくなってしまったのは全体的に前バランスになってしまっていたためだと思います。
この時は初めて来た場所(御殿場)で、環境を気にして演技に集中させられなかった競技会になってしまいました。

冒頭に述べた様に5歳と言う年齢を考えれば2009年の春の競技デビューはパーチェにとって素晴らしい滑り出しだったと言えるでしょう。
それでも「この時期の競技からパーチェの将来性を感じましたか?」という問い対しては

この時に将来性については正直まだ何も感じていませんでした。輸送日や待機馬場での運動は跳ねて走り回っていて、どうやって収めようか、落ちないようにしなくては…、
アリーナ内で落ち着いて回るには…という事しか考えられませんでした。

との答えが返って来ました。まだチャレンジは始まったばかり。彼女がパーチェと共に上のクラスの可能性を実感するのは、まだ先の事の様です。

(次回に続く)

企画・構成・文 河村 修(Facebook