【大久保登喜子の 今日も馬日和】〜Tokiko’s Horsy Journal〜 東京2020をめざす顔 (その2)

大久保登喜子 TOKIKO OKUBO

長年にわたって、「乗馬ライフ」「馬術情報」などの編集・制作に携わり、国内外の馬術競技会や、馬のイベント、選手、馬に携わる人たちを取材、交流を続けている国際馬術ジャーナリスト。著書に「ヨーロッパ夢の競馬場 ぜ〜んぶ馬の話」、翻訳書に「クラウス・フェルディナンドの触れ合い調教法 馬と踊ろう」、「ホースライディングマニュアル」などがある。

 

東京2020をめざす顔 (その2)

 

2020年もはや1カ月たちました。東京2020を目標にして、ヨーロッパに拠点を置いて活動している選手たちの最新動向をお知らせしましょう。代表選手が決まるのは6月半ばですが、1月10日で締め切った東京2020オリンピックに参加意思表示をした選手は障害馬術19名、馬場馬術17名、総合馬術6名の計42名。まだ、出場最低基準を満たしていない選手も含めてこの数字です。
この中から代表選手として選ばれるのは、各種目で3名ずつ。他にリザーブと補欠が種目ごとに1名ずつ選ばれます。代表選考に向けて正念場を迎えた選手たちにただオリンピックに向かっての心境を聞きました。
 楽しい話題は総合馬術の大岩義明選手と障害馬術の武田麗子選手が夫婦で五輪を目指していること。この2人は共に2012年ロンドン、2016年リオに出場しているが、2017年に結婚して、1歳半の坊やがいます。

 
 

(障害馬術) 
杉谷泰造(43歳・杉谷乗馬クラブ) 
 昨年末12月にアジア選手権大会に出場し、個人金メダルを獲得した。
「オリンピック連続出場7回目という記録がかかっているのと、祖父の川口宏一、父の杉谷昌保ともすごい選手だったので、三代目として恥ずかしくないように頑張りたいです。6月には代表選手に選考されたいと、そのことばかりで頭がいっぱいです。東京もその次のパリも楽しみにしています。6月に向けてベストコンディションでもっていきたいです。馬は人間以上にケアが必要なアスリートです。愛馬のヒロインデミューズ号もベストコンディションに持っていきます」


オリンピック連続出場7回目がかかっている杉谷泰造選手 ©Tokiko Okubo
 
 

(障害馬術) 
武田麗子(36歳・杉谷乗馬クラブ) 
 「ロンドン、リオとオリンピックに出場して、今度は東京ですが、今までと違って子供がいます(陵宗君、1歳)。息子はまだ小さくて分からないだろうけれど、親が一つの目標に向かってまい進していく姿を見て欲しいなと思います。ドイツ在住なので、午前中保育園に預けて、基本的には子供が保育園に行っている間だけがトレーニングできる時間です。
2019年初めに手に入れたオリビア号で五輪基準もクリアできました。夫婦2人で目指すメリットは、夫から客観的に気づいたことをアドバイスしてもらえること。ママになっても五輪を目指していることで、皆さんの希望になりたいです」

 
 

(総合馬術) 
大岩義明 (44歳・株式会社nittoh) 
 「19年ぐらいヨーロッパで暮らしていて総合馬術選手の中では最年長、リーダー的な存在になりました。チームの全員で持っている力を発揮できるようにサポートできたらと思います。頼もしいチームです。2019年は主戦馬の2頭(キャレ号とバートエルJRA号)がすごくいいシーズンを送れました。東京では必ず上位入賞します。子供はいまポニーに乗っていますが、将来は一緒に総合馬術をやれたらいいですね」


夫婦で東京を目指す大岩義明(左)、武田麗子(右)夫妻、中央は1歳11ヶ月の長男・陵宗君 ©Tokiko Okubo
 
 

(障害馬術) 
川合正育(21歳・杉谷乗馬クラブ) 
 川合選手は候補選手の中では最年少。12月にサウジのリヤドCSI4*-Wで優勝。4スターに優勝して周囲をあっと言わせた。トウキョウデュソレイユというイタリアチームの名馬も購入して備えている。
「15歳から初めて乗馬は6年目ですが、父の勧めもあって高校卒業してすぐヨーロッパに来ました。ロンドンオリンピック団体金メダルのピーター・チャールズのところで研修しています。昨年、リヤドの4スターで優勝したのは人生最高の記録です。馬術は若いから有利ということはないです。チャレンジ精神だけは誰にも負けませんので、東京では金メダルを取るつもりで頑張ります」


代表候補の中で最年少(21歳)の川合正育選手 ©Tokiko Okubo
 
 

(障害馬術) 
桝井俊樹(50歳・乗馬クラブクレイン) 
 桝井選手はリオ・オリンピックに出場したときすでに日本選手中の最年長だった。乗馬クラブクレインの所属なので、会社にバックアップしてもらえるが、サラリーマンとしての務めもある。普段はオランダ、ベルギーで活動している。
「2016年リオに出場したとき、これで終わりだと思っていたが、自国開催という特別な機会なので、アスリートとして最後の集大成として参加できればうれしい。馬は3頭いるが、主戦馬のジェリコS号は小柄だけれどいい馬なので、ベストを尽くしてやってみます」


東京をアスリートしての集大成にしたい桝井俊樹選手 ©Tokiko Okubo
 
 

(障害馬術) 
吉澤彩(28歳・ヨシザワライディングファーム) 
 ヨシザワライディングファームは父の貴(たかし)さんが1993年に創立した乗馬クラブ。父は彩(あきら)選手のオリンピック出場に夢を託して。2012年ガンで他界した。妹、弟ともライダーでとても仲がいい。
「9年前からオランダで研修しています。主戦馬はコンラト号。人生初めての夢をぜひかなえたいです。私がオリンピックに行くのが、家族の夢でもあり、地元の人たちの夢でもあり、応援してくれています。日本を背負って五輪に出場するという夢、それを東京オリンピックで果たせればと思います。代表選手に選ばれるのは大変だけれど、頑張ります」


オリンピックを目指してオランダで修業すること9年の吉澤彩選手 ©Tokiko Okubo
 
 

(馬場馬術) 
林伸伍(34歳・アイリッシュアラン乗馬学校) 
 「乗馬クラブでインストラクターを務めているので、ドイツと東京を半々に行ったり来たりしています。先生はノーベルト・ファンラーク氏。リオ・オリンピックのときは補欠で、悔しい思いをしました。東京ではぜひ代表になりたいです。普段から、フィギュアスケートはあんなに人気があるのだから、馬場馬術の魅力をもっと知ってもらいたい、広めたいと思っています。手に入れたフェルナンド号は、経験は少ないけれどポテンシャルが高く全ての運動課目が得意なので、自分と馬のパフォーマンスを上げていきます。東京ではチームで頑張りたいです」


馬場馬術の魅力を多くの人に知ってもらいたいと林伸伍選手 ©Tokiko Okubo